あの想いを契機に始めたポートレイト撮影もある程度年月を重ねてわかったことを、もしあなたがまだ初心者か不慣れでまだポートレイト撮影会ではなく独自のポートレイト撮影に踏み切れない、あるいは悩んでいることがあるならば、その回答の一部をここに書いてみたいと思った

ポートレイト撮影に方法論はない。というと、嘘言うなと言われるだろう。いや、技法の話なら、セオリーは存在するし、私自身も独学で(要するに当ブログの下の方に貼ってあるポートレイト撮影教本などを読み実践して)ポートレイト撮影を実践している。正直、ポートレイト撮影会(すなわち「モデル:カメラマン=1:多」)というものには参加したことがない。とはいえ撮影会しか参加したことのないカメラマンの中でも、実は1:1での撮影を希望している方も本当はいるのではないかと思う。ただそれが「ある種の壁」によって阻まれている可能性があると思う。それは、私も数年前に同じ思いだったから、よくわかる。そこで、今私がある程度1:1のモデル撮影をこなすことができている理由を、少しだけ書き綴ってみたい。いや、決してこれが正解だというつもりはない。あくまでも、私の実体験に基づくものでしかない。けれど、壁の1つを取り除く一助になれば幸いだ。

私がなぜモデルさんを募集して撮影することになったのか。
それは、単純に「肖像権問題の回避」である。

当然のことだが、勝手に道端で人を撮っていたら肖像権の問題が発生する。もちろん、プライバシーの問題も発生する。
顔が判別できないようにとればいいかもしれない。が、判別できない顔で満足できる作品であるかどうかという話である。そういう写真もあるだろうけれど、たぶん、そうでない写真の方が多いだろう。なぜなら、顔のみえない写真ばかりを並べていたら、おそらく、いずれは「気持ち悪い」作品に仕上がっていく(最近の森山大道さんのカラー作品なんかは、そんな状況に近しいものを感じるのである)。
この回避策として、私の場合は「許可が取れない(取らない)人を撮らずに、許可を取った人を撮ればいいじゃないか」という判断に傾いた。という、ごく単純な理由からの、ポートレイト撮影のスタートであった。

とはいえ、ポートレイト撮影としてモデルさんを撮影するとなれば、やはり、モデルさんをキチンとキレイに撮らなければ、撮れなければ、何の意味もない。
モデルをお願いした方に対して「ストリートフォトの偽装ですから」という理由で適当に撮影することは、許されないというのが私のスタンス。

しかし、ポートレイト撮影を始めた頃の私には、女性モデルの撮影とは、ストリートフォトの代替でしかなかった。実際、濱未亜さんを撮影した時には、そういう試みのもとで撮影を実施した(濱未亜さんは当ブログのモデル募集で最初に応募していただいたモデルさんで、今は写真雑誌などで広く活躍中)。

彼女の撮影で自分が学んだのは、とはいえ、「もっとポートレイト撮影の基本を勉強するべきだ」ということだった。

どのような技術でもそうだと思うが、基本技術を理解せずに何かをしようとしても、天才以外の人間には、まともなことは成し得ない。基本とか教科書とかをないがしろにする人ほど持論展開や独自手法を強調して論説するものだが、世の中に普及している教科書や理論・セオリーというのは、要するに「数多の天才たちが獲得した英知を整理し記録したもの」なので、凡人以下が獲得したものよりも遥かに濃密で価値が高いものなのだ。
で、私はそういう認識で写真以外のことも行動原理を置いているので、写真、そしてポートレイト撮影についても、この原理に基づいて行動をしているにすぎないのだ。
ということで、ポートレイト撮影のための本を徐々に買いつつ、ぼちぼち読みつつ、その後のポートレイト撮影に臨んで行った。

以上が、私がポートレイト撮影をしようと思った動機である。

そして、私がモデルさんを募集してポートレイトを撮影するというルーチンを形成するまで、どういう経緯をたどっていったか。
これはまあ、あまり明瞭かつセオリー的なものはないと思うんだけれど、ある一人のアマチュアカメラマンの軌跡という程度で、ここに記してみたい。

モデル募集をブログに掲載

募集といっても大々的に専用サイトとかで募集して山盛り応募があっても困るので、「どうせ見られてないだろう私のブログに募集記事を書いておこう」という、ごく消極的な手法で着手した。
なので当然、掲載してすぐに応募があるとは思っていなかったし、実際、掲載して1年ぐらいしてから最初のご応募を頂いた。
最初のモデル撮影を経験して、その経過をブログで掲載。
そこから、数名の女性モデルの方から立て続けにご応募いただくことになった。中にはプロモデルを目指しておられる方もいたし、非日常を体系されたい目的でご応募いただいた方もいた。
そして、いまでも長くお付き合いいただいているモデル様も数多くいらっしゃる。
この点は実は意外であった。モデルさんとは一期一会なものだと、私は心のどこかで勝手に決めていたからだ。
モデルさんとの長いお付き合いというのは、私にとっては予想外の嬉しさであった。

撮影までの準備

モデルさんとのやりとりは、基本すべてメールなどの電子媒体のみである。
現場でどうしても連絡を取らざるをえない場合に限り電話をすることもあるが、電話番号を教えてもらうようなことはせず、事前に自分の番号をお知らせするにとどめている。プライバシー情報の保持は、可能な限り少なくするよう心がけている。
もちろんモデルさんから教えてくれる場合もあるので、その場合はアドレス帳などに登録して、何かあったら連絡できるような状況にはしておくが、こちらからは聞かない。
ちなみに長くお付き合いしていただいているモデルさんだと、今ではFacebookメッセージやLINEなどでやりとりをすることが多い。
メールでは、しっかりと撮影の趣旨などを伝えている。自分の場合はモデル料はそうお支払いできないので(プロなら金が取れるからちゃんとした額をお支払いできるけれど、撮影による観入りは私は完全0円なので自腹となる。そのため、なけなしの小遣いから捻出できる額に留まってしまう)、交通費を含めた謝礼程度になりますよなどをお伝えしている。
トラブルになることはそうそうないとは思うけれど、お金の話はお互いに気持ち良く撮影ができるように、ちゃんとしておくほうがいい。
また、事前に撮影シチュエーションなどをイメージできるようにするために、可能な範囲で事前に自撮り写真をメールで添付してもらうようモデルさんにお願いしている。

撮影スタイルの確立

初期の頃は、自分がどういうモデル撮影をするのかすら想像できなかった。
いや、極論をいえば、今もまだ自分がモデル撮影に対して、なにがしかのイメージができている、わけではない。
唯一言えるのは、自分の作品の制作に使える素材を獲得するか否か、ということに尽きる。ここは揺るぎない。
とはいえ、ポートレイト撮影を続けていく中で、いくつかのスタイルは決まってきたきがする。
教本などから学んだものもあるが、結局自分でその方法論を取り入れても、最後は我流に変化していくものもある。
いろいろ学んだ中で自分がいま確立しているものは、おおむね以下のような感じだ。

(1)カフェで打ち合わせ
待ち合わせ場所で最初のあったら、近くのカフェで打ち合わせをさせてもらうようにしている。
打ち合わせの内容は当日のスケジュール確認や移動の流れ、どういう写真を撮るか、自分はどういう写真を撮っているかも含めた自己紹介、モデルさんの差し支えない範囲での背景確認などである。
モデルさんの背景確認といっても、根掘り葉掘り聞くわけではなく、ごく普通の会話の中でモデルさんから伝えてもらえるバックボーンに興味を示していくという程度である。

たとえばこんな感じ。
・あいさつ…「ご応募いただいて本当に有難うございます。今日は宜しくお願いします」「朝早くから有難うございます」「夜遅くなのに有難うございます」
・スケジュール…「今日のスケジュールなんですが、打ち合わせを終わったら小石川後楽園に移動して1時間半ぐらい撮影しましょう」「その後はお昼ご飯の休憩を1時間ぐらい、午後はゆっくり1時間ぐらいかけて御茶ノ水駅方面に移動しつつ途中途中で撮影してみましょう」「御茶ノ水駅周辺で少し撮影ができそうなら撮影させていただいて、15時ぐらいにはカフェで休憩いれて、体力的に余力があったら少し撮影したあとに解散にしましょう」「途中で疲れたり体調が悪くなったりしたら遠慮なく言ってくださいね」「都合が悪くなったりしたら言ってくださいね」
・自己紹介…「普段はコンピュータ屋さんしてるんですよ」「写真はアマチュアでやってます」「ポートレイト歴は3年ぐらいです」「まだまだうまく指示が出せない場面もあるので、つたない指示だったら遠慮なく聞いてください」「撮影した写真は現像後にお渡しできます」「写真は商用利用や販売には利用しません。国内外コンテストに応募したり写真展に出展したりが目的です」「こういう写真を撮ってます(iPhone見せる)」「こういう作品作りをしています」
・コミュニケーション…(写真に興味を示してくれたら)「写真は好きですか?」「カメラは何を持ってるんですか?」「普段はどういうものを撮ってます?」「OLも大変ですよね。自分もサラリーマンだからその気持ちよくわかります!」

どちらかというと、コミュニケーションから信頼関係を築くところに最初の打ち合わせはウェイトを置いている。スケジュールやら自己紹介やらは、ものの5分で終わってしまうため、まずはモデルさんにコーヒーを飲みながらいろいろお話をしてリラックスをしてもらいたいというのが最大の目的である。
特に最初に会う女性モデルさんは、見知らぬ男性と1対1で会うわけだから、こちら以上に緊張しているはず。もちろんこの程度でのコミュニケーションで信頼関係が完全に築けるわけもない。最低限、撮影を終えて写真をお送りするまでが一連のコミュニケーションであり、そこで初めてモデルさんが安心できるというものだと私は思っている。

(2)スローペースで撮影開始
打ち合わせ後からスタートの撮影はゆっくり。まあ自分の場合は連写派なので、結構ばしゃばしゃ撮るんだけれど、午前中でもあるし(自分の場合は10時11時スタートが多い)、まずは準備運動的に進めていくようにしている。
「ここをバックに10分ぐらい撮ってみましょうか」とか「顔を右から左にゆっくり動かして。途中カメラ目線もお願いしますね」など、簡単に指示を出して撮影。
最初に数枚撮ったら「まずはテストで撮ったんですが、こんな感じになりました」と液晶を見せることも忘れない。デジタルカメラになってから、撮ったものがすぐ見ることができるという点は功罪さまざま語られるが、こういう場面では大きな「功」の威力を発揮する。
モデルさんが「いいですね〜」と同意してもらえたら「じゃあ、この感じでちょっと撮り進めましょう」といって、長めに撮影をしていく感じだ。もちろん撮り終わったら液晶モニタを見せるようにはしている(モデルさんによっては最後にカフェでまとめてみてもらうなどの場合もある)。

(3)昼食はモデルさんのお好きなお店で
カフェも昼食もカメラマン負担としているので、あまり高いところを選ばれる困るのだけれど、だいたい1,000円ぐらいのランチを選んでもらっている。撮影場所周辺に店があるかどうかもポイントだけれど、安いファミレスなどしかない場合はそういう店に入ることもある。1,000円ぐらいのランチを食べてもらって午後も気持ち良くモデル撮影をしてくれるなら御の字だと個人的には思っている。

(4)午後はがっつり撮影
お腹いっぱいなので眠くなってくる時間、なるべく場所移動もてきぱきハードに撮影を進めるような感じ。
もっともこれは撮影地依存なので、必ずしもそうできるとは限らない。
街中などで撮影する場合は、いろいろな場所で撮影してもらうべく「こっちの壁にきてもらえるかな」「この道の真ん中に立ってもらえる?望遠で狙うからちょっと遠くに移動するね。手で合図したらゆっくりカメラ方向に歩いてきて」とか指示を出して、本気撮影モード的な状況に入り、がりがり撮る。

(5)最後にカフェで撮影確認
撮影が一通り終わってカフェなどが近くにあったら入ることもある。入らないこともあるけれど、疲れているようならカフェで一息ついて撮影したものをカメラのバック液晶でみてもらうなどしている。
これは状況に応じて、やったりやらなかったり、やれたりやれなかったり、という感じだが、モデルさんとの貴重なコミュニケーションの一つでもあるので、なるべく端折りたくはない。

総じて思うところは、計画した全時間を撮影に費やしたいというカメラマン側の気持ちは完全に押し殺すほうがよいと思う。自分の場合、たった1枚だけしか撮影しなくても、この流れは基本的に崩すことはないだろう。
モデルさんが気持ち良く、そしてカメラマンを信頼した上で撮影に臨んでくれないと、結果的にはただの1枚もいい写真など撮れないと思うからだ。
ポートレイトの撮影技術は自力でどうにかなるが(どうにかしなきゃならないが)、モデルさんの気持ちはモデルさんのその時の状況に依存するのだから、状況をより良いものにしていくために全力を投じるというのは、ごく普通の考え方だと思っている。

撮影場所の選定

実は撮影場所の選定は難しい。
公園での撮影は事前許可や費用が必要となる。公共のエリアでの目立った撮影は、いずれにしても、ぬかりなく手続きをしない限りは、何らかのお咎めを受けることを覚悟しなければならないだろう。私有地は所有者への確認抜きで行えば不法侵入と扱われる可能性もある。ちょっとした大きなビルの敷地内でレフ板でも開けば、たちまちガードマンが飛んでくる(飛んでこられた経験がある)。
他にもたとえば、私自身は経験がないが、「谷中ぎんざ」商店街一部の店舗による写真撮影妨害などの問題などもあるようだ。

場所選びは本当に難しい。
モデルさんに希望の場所を選んでもらっても、必ずしもそこが撮影に適した場所とは限らない。そうなると、カメラマンである自分があらかじめ場所を選定するしかない。
どこが適切な場所であるかは一概に言えないが、少なくとも言えるポイントはいくつかある。

(1)人気のない所
別に悪いことをしているわけではないのだが、人が大量に群がっている場所でポートレイト撮影というのは難しい。
たとえば季節の花を背景に撮影することを考えてみる。周囲には数多くの「花の撮影」をしているカメラマンが多い。そこをかき分けて花にたどり着き花のそばにモデルを設定しカメラマンのポジションを確保し撮影する、というのはなかなか至難の技であろう。
一面の花畑というシチュエーションでの撮影でない限り、花はモデルの一部にあれば十分事足りる。そのため、桜なら誰もいない場所の1本、チューリップなら道端の数本などという感じで、誰も見向きもしないようなところを選ぶほうがいい。
花や風景と一緒でなくても、周囲に人が多ければ撮影の自由度が下がるのは言うまでもない。背景に人が入るし、撮影ポジションに他人がいたり、もうどうにもならない。サッカーボールが転がってきて三脚を倒されても文句は言えない。

(2)十八番プレイスを持つ
ここなら確実に撮り慣れてるし状況も把握できるから撮影できる!という場所が1ヶ所でもあるとだいぶ違う気がする。
自分の場合は新宿西口がそれに該当するが、ここでの撮影は何度もやっているので応用もきくし店の場所などもわかるので休憩も取りやすいなど把握が楽だ。どういう写真が撮れるかもイメージしやすい。
デメリットとしては、背景が同じポートレイト写真が多くなってしまうということぐらいか。まあこれも画角を変えるなど工夫次第であはると思う。
とはいえアンパイとして1つはあると気持ちとしては楽ではなかろうか。

待ち合わせと覚悟

初めてのモデルさんとの待ち合わせはある程度覚悟が必要。
もしかしたら、来ないかもしれない。
や、そんなことあるのか?って思う方もいるだろうが、私は1回すっぽかされたことがある。2時間待っても来ず、メールをしても返事がない。事前の打ち合わせメールでは返事が普通にやってきたのに、当日はメールがまったくこない。
いざとなって怖くなって逃げるというパターンもありうるということである。
これは回避策がない。腹をくくるしかないだろう。

つれづれ書いてみたが、自分でもかならずこれに沿ってやっているわけでもなくて、やっぱり臨機応変で現場に応じて対応しているし、そうするしかない。
むしろ、こういうことを想定した上で場数を踏みイレギュラーを体験した上で自分の方法論を確立していくことができれば、しめたものではないだろうか。
そして自分もまだまだ、今も「場数踏み中」である身だ。

モデルさんもまだまだどんどん撮影したい。
引き続き、女性モデルさん募集中である。

ポートレイトノススメ基礎から始めるプロのためのポートレイトライティング (コマーシャル・フォト・シリーズ)ポートレート撮影テクニック100 (玄光社MOOK テクニック100シリーズ)ポートレートの悩みを解消する本 (玄光社MOOK フォトテクニックデジタル別册)女の子がかわいく見えちゃう55の撮り方 (玄光社MOOK フォトテクニックデジタル別册)ポートレートの新しい教科書

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。